規格書は数字の一覧に見えますが、同じ数字が別のものを指していることがあります。ここでは弊社が実際に確認している観点を、扱っている品目の実例で整理します。
1. %の分母は何か ― 最初に固める
含量が何を基準にした値かが曖昧だと、同じ数字でも必要な原料量が変わります。弊社が扱う品目から四つ挙げます。どれも同じ構造の問題です。
| 原料 | 分母の分かれ方 | ずれの大きさ |
|---|---|---|
| L-カルニチン | 塩として / L-カルニチンとして | 対イオンの分子量分 |
| ルテイン | 遊離型 / エステル型 | 脂肪酸の分子量分 |
| ビルベリーエキス | アントシアニン36% / アントシアニジン25% | 約1.4倍 |
| グルコシルセラミド | 原料重量 / 成分量 | 含量%による |
ビルベリーが最も分かりやすい例です。規格書には「アントシアニン36.0%以上」と「アントシアニジン25.0%以上」が並んで書かれ、どちらも同じロットについて正しい値です。配糖体として測るか、糖を外したアグリコンとして測るかの違いだからです。機能性表示の関与成分名は「ビルベリー由来アントシアニン」なので36%を使いますが、25%で割ると必要なエキス量を約1.4倍に見積もってしまいます。
2. 分析方法で数値が動く
- 分析法の明記 ― 食品添加物公定書の方法か、日本薬局方か、社内法か。社内法なら妥当性の根拠を確認します
- 保証のタイミング ― 製造時か、有効期間末か
- 単位のゆれ ― mgとμgの混在。0.6mgと600μgは同じ量ですが、規格書によって表記が変わります。グルコシルセラミドの届出では両方の表記が使われています
- ロット間のばらつき ― 規格下限値ではなく実測の分布で見ます
3. 濃縮倍数は規格ではない
植物エキスの品名に入る「20:1」「50倍濃縮」という表記は慣行的なもので、これを規律する公的な基準はありません。数字が規格のように見えますが規格ではありません。比較できるのは指標成分の含量です。同じ「20:1」でも、抽出溶媒・抽出部位・乾燥方法が違えば中身は変わります。
4. 名前が同じでも別物 ― 由来と種の確認
品名が近くても別のものを指している例は多くあります。
- ビルベリーとブルーベリー ― ビルベリーは Vaccinium myrtillus、ブルーベリーは Vaccinium spp.。機能性関与成分としての届出はビルベリーに147件、ブルーベリーには0件です
- グルコシルセラミドの由来 ― パイナップル由来110件、米由来101件、こんにゃく由来33件と、由来ごとに別々に届出されています
- コラーゲンペプチドとII型コラーゲン ― 配合量の桁が違います(前者はg単位、後者はmg単位)
- 乳酸菌の菌株 ― 「乳酸菌」という一般名では関与成分として特定できません
5. 規格書チェックリスト
- 含量の基準 ―「%の分母」が明記されているか。換算値なら係数と根拠
- 分析方法 ― 公定書法か社内法か
- 保証のタイミング ― 製造時か有効期間末か
- 単位 ― mg / μg / 億個 の別
- 由来・種 ― 学名まで。近縁種との区別
- 使用部位 ― 根・葉・果実・種子・樹皮
- 指標成分の規格値 ― 濃縮倍数ではなく
- 保管条件と有効期間
- アレルゲン ― 由来に基づく表示区分
