有胞子性乳酸菌・ビフィズス菌の原料ガイド|菌株名がなければ届出は組めない

届出208件、菌株名のないものはゼロ
消費者庁の届出を機能性関与成分名で集計すると、有胞子性乳酸菌は208件(有効142件・撤回66件)です。この208件の関与成分名を一つずつ見ると、例外なく菌株名が書かれています。
- SANK70258 … 194件
- lilac-01 … 10件
- その他の株 … 4件
- 菌株名なし … 0件
これが調達で最初に効きます。原料の品名が「有胞子性乳酸菌」とだけ書かれていたら、その原料では届出を組めません。機能性関与成分として特定できないからです。規格書に菌株名が明記されているか ― 発注前にここを確認してください。
現場では「乳酸菌」「ビフィズス菌」という一般名のままの品名が珍しくありません。一般食品として配合するなら問題ありませんが、機能性表示を視野に入れるなら最初から菌株指定で調達する必要があります。
同じ菌の属名が三度変わっている
届出データを届出日順に並べると、同じ菌株(SANK70258)が三つの異なる属名で登録されていることが分かります。
- Bacillus coagulans … 89件(2016年10月 ~ 2023年8月)
- Weizmannia coagulans … 71件(2022年4月 ~ 2025年12月)
- Heyndrickxia coagulans … 43件(2025年3月 ~ 2026年7月)
注目すべきは期間が重なっていることです。2022年から2023年にかけてはBacillusとWeizmanniaが並存し、2025年にはWeizmanniaとHeyndrickxiaが並存しています。分類が改められても、既存の届出がただちに書き換わるわけではないからです。
実務上の帰結は二つあります。
- 検索で取りこぼす ― 「Bacillus coagulans」だけで類似届出を探すと、89件しか見つかりません。実際には208件あります。属名を変えて三回検索する必要があります
- 規格書と届出書で表記がずれる ― 原料メーカーの規格書が古い属名のままということが起こります。菌株名(SANK70258)が一致していれば同じ菌です。属名の違いだけで別物と判断しないでください
菌株名が本体で、属名は変わりうるラベルだと考えると整理できます。
配合量は菌種ごとに桁が違う
1日当たりの摂取目安量当たりの含有量を数えると、菌種ごとに標準がはっきり分かれます。
- 有胞子性乳酸菌 … 1億個が167件(208件中)。次が2億11件、10億7件
- ビフィズス菌 … 20億個が59件、100億35件、10億26件、50億25件
- ガセリ菌 … 10億個が39件、100億26件
有胞子性乳酸菌だけ桁が二つ小さいのが特徴です。これは芽胞を作る性質と関係があります。芽胞を形成した状態では熱と酸に強く、製造工程や胃酸を越えて腸に届きやすい。だから少ない菌数で設計されています。
逆に言えば、耐熱性を前提にした配合設計なので、剤形や製造条件を変えるときに「他の乳酸菌と同じ扱い」にはできません。打錠時の加熱、二次加工の温度帯を事前に共有してください。
ビフィズス菌は株名そのものが訴求になっている
ビフィズス菌の届出は276件(有効134件・撤回142件)で、撤回率が51%と高い領域です。関与成分名の表記を数えると、特定の株に集中しています。
- ビフィズス菌BB536 … 88件
- ビフィズス菌BifiX(B. lactis GCL2505)… 45件
- ビフィズス菌MCC1274(B. breve)… 11件
届出文言も「本品にはビフィズス菌BB536が含まれます。ビフィズス菌BB536には、腸内環境を良好にし…」という形で、株名がそのまま文言に入ります。株名は規格項目であると同時に訴求の一部です。
ガセリ菌も同様で、81件のうちSP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)、CP2305株、OLL2716(LG21)が中心です。「ガセリ菌」という品名だけでは、どの訴求にも接続できません。
菌だけでなく「餌」も関与成分になる
オリゴ糖や食物繊維はプレバイオティクスとして、それ自体が関与成分になります。
菌とオリゴ糖を併記した届出もあります(「乳酸菌シロタ株、ガラクトオリゴ糖」など)。どちらを関与成分にするかで、必要な規格も研究レビューも変わります。両方を関与成分にするなら、両方について根拠が要ります。
なお菌数の単位にも注意が必要です。原料は「1gあたり○億個」で表示され、届出は「1日摂取目安量あたり○億個」で書きます。間に配合量という係数が入ります ― ビルベリーでのエキス量と成分量の関係と同じ構造です。
規格書で確認すること
- 菌株名 ― SANK70258、BB536 のような株の識別子。これがなければ届出は組めない
- 属名の版 ― 古い属名でも菌株名が一致すれば同じ菌。検索時は属名を変えて複数回
- 菌数と単位 ― 1gあたりか、1日摂取目安量あたりか。賞味期限末での保証値か、製造時の値か
- 生菌か殺菌か ― 殺菌(加熱処理)品は生菌とは別物として扱う
- 耐熱性 ― 芽胞の有無。打錠・二次加工の温度条件を共有する
- 保管条件 ― 温度と湿度。菌数は保管で減る
ご相談
規格書・サンプル・お見積りはお問い合わせフォームから、機能性表示を想定するか否か、目標菌数、剤形と加熱条件を添えてご連絡ください。菌株が未定の段階でもご相談いただけます ― 訴求の方向が決まっていれば候補を絞れます。
よくある質問
品名が「有胞子性乳酸菌」だけの原料でも届出できますか。
できません。届出208件すべてに菌株名(SANK70258が194件、lilac-01が10件)が入っており、菌株名なしは0件です。機能性関与成分として特定できないためです。一般食品への配合は可能です。
規格書の属名が古いようです。別の菌ですか。
菌株名が一致していれば同じ菌です。届出データでも同一株が Bacillus coagulans(89件)、Weizmannia coagulans(71件)、Heyndrickxia coagulans(43件)の三通りで登録され、期間も重なっています。菌株名が本体で、属名は変わりうるラベルと考えてください。
類似届出を探しても件数が少ないのですが。
属名で検索していませんか。「Bacillus coagulans」だけでは89件しか出ませんが、実際は208件あります。属名を変えて三回検索してください。
なぜ有胞子性乳酸菌だけ菌数が少ないのですか。
1億個が167件で標準です。ビフィズス菌の20億個、ガセリ菌の10億個と比べて桁が二つ小さい。芽胞を作ると熱と酸に強く、製造工程や胃酸を越えやすいためです。逆に耐熱性を前提にした設計なので、加熱条件の変更時は要注意です。
菌数はどの時点の値ですか。
規格書で確認してください。製造時の値か、賞味期限末での保証値かで意味が変わります。また原料は「1gあたり」、届出は「1日摂取目安量あたり」で書くため、間に配合量という係数が入ります。
オリゴ糖と菌、どちらを関与成分にすべきですか。
目的次第です。ガラクトオリゴ糖は届出20件で「ビフィズス菌を増やして腸内環境を良好に保つ」という文言、イヌリンは286件です。両方を関与成分にするなら、両方について根拠が必要になります。
