美容系原料マップ|届出データが示す「止まった素材」と「増えている素材」

美容系原料の調達イメージ ― 粉体原料の計量
結論「美容系」という括りで原料を選ぶと外します。消費者庁の届出を機能性関与成分名の単位で数えると、同じ美容訴求の中で届出が止まった成分と増えている成分がはっきり分かれます。ヒアルロン酸Naは累計78件に対して直近12か月が1件、撤回した25社のうち同じ成分で有効届出を持ち続けている会社は1社だけ。一方でサケ鼻軟骨由来プロテオグリカンは直近12か月で34件入っています。さらに同じ「セラミド」でも、由来によって届出の配合量が0.6mg・1.2mg・1.8mgと分かれ、しかも原料粉末のグルコシルセラミド含量は3〜10%です。届出に書く数字の十数倍から三十数倍を発注することになります。

以下の数字はすべて、消費者庁「機能性表示食品の届出情報」2026年9月28日取得分を、機能性関与成分名を区切り文字で分割した成分名の一致で集計したものです。複数成分の届出は該当する成分それぞれに数えています。「直近12か月」は届出日が2025年10月1日以降のものを指します。

1. 「美容」は一つの市場ではない

美容訴求でよく挙がる成分を、累計届出数と直近12か月の新規届出数で並べると、累計の大きさと今の勢いが一致しません。

機能性関与成分名累計有効撤回直近12か月
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカン1951464934
アスタキサンチン25914011931
N-アセチルグルコサミン134874716
米由来グルコシルセラミド101416013
カツオ由来エラスチンペプチド8458268
葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として)201918
非変性Ⅱ型コラーゲン(3重らせんとして)8808
サケ鼻軟骨由来Ⅱ型コラーゲン171617
コラーゲンペプチド6851177
パイナップル由来グルコシルセラミド10354494
大豆イソフラボン13267654
こんにゃく由来グルコシルセラミド3116150
ヒアルロン酸Na7813651

累計103件のパイナップル由来グルコシルセラミドと、累計101件の米由来グルコシルセラミド。ほぼ同じ規模ですが、直近12か月は4件と13件で三倍以上の差がついています。累計だけを見て「どちらも定番」と判断すると、供給側の体制や類似届出の探しやすさが想定と変わります。

2. 撤回を読み違えない ― 「作り替え」と「撤退」は別

撤回件数そのものは判断材料になりません。商品を入れ替えるたびに撤回と届出が発生するため、撤回が多い=衰退ではないからです。見るべきは「撤回した会社が、同じ成分で有効届出を持ち続けているか」です。

成分撤回した会社うち有効届出を保持比率
アスタキサンチン63社25社39%
大豆イソフラボン40社10社25%
米由来グルコシルセラミド37社9社24%
カツオ由来エラスチンペプチド21社3社14%
ヒアルロン酸Na25社1社4%

アスタキサンチンの撤回119件は、四割の会社が同じ成分で商品を出し直している「入れ替え」です。ヒアルロン酸Naの撤回65件は違います。撤回した25社のうち戻ってきたのは1社。累計78件に対して直近12か月は1件で、新規の流入がほぼ止まっています。

ここで誤解のないように申し添えます。これは「機能性表示食品として届出されているか」だけの数字です。ヒアルロン酸は一般食品にも化粧品にも広く使われており、原料としての需要がなくなったという意味ではありません。読み取れるのは「この成分で新たに機能性表示を組む会社が減っている」ということで、届出を前提にした企画では類似届出も供給側の資料も集めにくくなる、という調達上の含意です。

3. 同じ「セラミド」でも分母が四通りある

セラミドは由来別に届出されます。そして由来ごとに最頻の配合量が違います。下表は、複数成分の届出で対象成分の値を特定できたものだけを数えています(例:「ベータカロテン24mg、GABA100mg、こんにゃく由来グルコシルセラミド600μg」のような記載から600μgを取る)。

届出名最頻の配合量累計
パイナップル由来グルコシルセラミド1.2mg(79件/判定可79件)103
米由来グルコシルセラミド1.8mg(42件)/0.6mg(22件)101
こんにゃく由来グルコシルセラミド0.6mg(13件)/1.8mg(8件)31
グルコシルセラミド(由来の記載なし)1.2mg(14件)/0.6mg(9件)27

届出名が「グルコシルセラミド」である以上、書くべきはグルコシルセラミドとして何mgかです。ところが原料粉末そのものはグルコシルセラミドの塊ではありません。市販原料の規格ではこんにゃく由来で3%以上、パイナップル由来で約4%、米由来で6〜10%以上です。

この二つは掛け算でつながります。こんにゃくセラミド末の推奨摂取量は1日20mg、含量は3.0%以上。20mg×3.0%=0.6mgで、届出の最頻値と一致します。届出に書く0.6mgは、発注では20mgです。ビルベリーで届出は成分量、発注はエキス量と書いたのと同じ構造が、セラミドでも起きます。

規格書が「セラミド含有エキス末」としか書いていなければ、この掛け算ができません。その数字は届出にそのまま使えません。

調達の場面では次の二点を規格書で確定させてください。①グルコシルセラミドの含量が定量値として書かれているか(「含有」ではなく数値と試験法)、②その含量は原料1gあたりか、一日摂取目安量あたりか。この二つが決まらないと、1.2mgを満たす配合量が計算できません。

4. 美容原料のつもりが、届出では関節だった

届出の「表示しようとする機能性」に出てくる語を数えると、カタログ上の分類と実際の訴求がずれている成分があります。

成分頻出する訴求語(件数)
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカン関節 165・ひざ 77・弾力 55 / 乾燥 11
カツオ由来エラスチンペプチド関節 28・乾燥 25・うるおい 24・弾力 24・ひざ 23
コラーゲンペプチド弾力 30・関節 24・うるおい 17
米由来グルコシルセラミド乾燥 87・バリア機能 56・肌の潤い 51
アスタキサンチン疲労 128・紫外線 118・目 92・乾燥 92
ヒアルロン酸Na乾燥 68・肌の水分 62

プロテオグリカンは美容原料として紹介されることが多い成分ですが、届出の訴求は関節165件に対して乾燥11件です。エラスチンも関節とひざが肌と並びます。「美容で引き合いがある成分」として社内に共有すると、根拠として参照できる届出が想定と違う領域に集まっていた、ということが起きます。

逆にアスタキサンチンは、美容(紫外線118・乾燥92)と目の機能(目92)と疲労(128)が一つの成分の中に同居しています。訴求を一つに絞らなくてよい代わりに、どの訴求で届出を組むかで必要な配合量が変わります。最頻は6mg(67件)と4mg(57件)、次いで9mg(45件)で、ここも分かれています。

5. 届出名が移っている成分がある

非変性Ⅱ型コラーゲンは、届出データの中で名前が移っています。

  • 「非変性Ⅱ型コラーゲン」 … 累計54件・有効16件・直近12か月2件(初回2015年)
  • 「非変性Ⅱ型コラーゲン(3重らせんとして)」 … 累計8件・有効8件・直近12か月8件(初回2025年12月)

後者は8件すべてが直近12か月です。つまり新しく届出するものは括弧つきの名前で出ている。括弧の中身は分母の宣言で、「3重らせん構造を保った状態として何mg」という意味です。同じことが葛の花由来イソフラボン(テクトリゲニン類として、初回2025年6月・累計20件中8件が直近12か月)でも起きています。

調達側の実務としては、既存の規格書が旧表記のままだと、新しい届出名に合わせた含量表示を供給元に求め直すことになります。見積りを取る段階で「どの表記で、何を分母にした含量を出せますか」を聞いておくと、後戻りが減ります。

6. 調達時に確定させる五項目

  1. 届出名と一致する成分名が規格書にあるか ― 「セラミド」ではなく「グルコシルセラミド」、「Ⅱ型コラーゲン」ではなく「非変性Ⅱ型コラーゲン(3重らせんとして)」。
  2. 関与成分の含量が定量値で、試験法つきで書かれているか ― 「含有」「配合」だけの記載は届出に使えません。
  3. その含量の分母 ― 原料1gあたりか、一日摂取目安量あたりか。ここを取り違えると配合量が桁で狂います。
  4. 由来とアレルゲン表示 ― ここは由来ごとに扱いが違います。下表で確認してください。
  5. 類似届出が今も増えているか ― 直近12か月の件数を見ます。止まっている成分は、根拠資料も供給側の対応も薄くなりがちです。
原料の由来アレルゲン表示上の扱い
サケ鼻軟骨由来(プロテオグリカン・Ⅱ型コラーゲン)「さけ」は推奨表示(特定原材料に準ずるもの)
ゼラチン由来のコラーゲンペプチド「ゼラチン」は推奨表示
豚由来(プラセンタ等)「豚肉」は推奨表示
カツオ由来エラスチンペプチドカツオは特定原材料にも準ずるものにも含まれない
魚由来コラーゲン魚種による。さけ・さばなら推奨表示、それ以外は対象外
米・こんにゃく・パイナップル由来セラミドいずれも対象外(大豆由来の場合は「大豆」が推奨表示)

推奨表示は義務ではありませんが、カプセル基材と同じく、取引先の表示方針で求められることがあります。「魚由来だからアレルゲン表示が要る」と一括りにすると、必要のない表示を載せたり、逆に必要な表示を落としたりします。魚種・部位まで規格書で確定させてください。なお特定原材料は2026年4月1日にカシューナッツが追加され、準ずるものにピスタチオが加わっています(2年間の経過措置あり)。

FONTIAでは、検討中の成分について類似届出の件数・配合量の分布・表示文言を集計してお出ししています。規格書の含量表示が届出名と噛み合うかの確認も含めてご相談ください。カタログではヒアルロン酸、フィッシュコラーゲン、グルコサミン、発酵N-アセチルグルコサミンを扱っています。コラーゲンの由来・分子量についてはコラーゲンペプチド原料ガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問

撤回が多い成分は避けるべきですか。

撤回数だけでは判断できません。撤回した会社が同じ成分で有効届出を持ち続けているかを見てください。アスタキサンチンは撤回63社中25社(39%)が保持しており商品の入れ替えですが、ヒアルロン酸Naは25社中1社(4%)です。

ヒアルロン酸はもう使えない原料ですか。

違います。この数字は機能性表示食品の届出だけを見たものです。一般食品や化粧品での使用は別です。届出を前提にした企画では類似届出が集めにくい、という意味に留めてください。

セラミドの配合量が資料によって違うのはなぜですか。

由来で違います。届出の最頻値はパイナップル由来1.2mg、米由来1.8mg、こんにゃく由来0.6mgです。さらに「届出に書く量」と「発注する量」が別物です。原料粉末のグルコシルセラミド含量は3〜10%なので、こんにゃく由来0.6mgは原料20mgにあたります。資料がどちらの数字を指しているかを確認してください。

プロテオグリカンは美容原料として提案してよいですか。

届出の訴求は関節165件に対して乾燥11件です。美容訴求で届出を組むなら、参照できる類似届出が少ないことを前提に根拠を用意してください。

「(3重らせんとして)」のような括弧は何ですか。

関与成分の分母の宣言です。何を測って何mgと言っているかを名前の中で確定させています。新規の届出はこの表記に移っており、規格書の含量表示も同じ基準に揃える必要があります。

類似届出の件数はどこで確認できますか。

消費者庁の届出情報検索で成分名を入れます。ただし表記ゆれに注意してください。ヒアルロン酸は「ヒアルロン酸Na」「ヒアルロン酸Na」(全角)「ヒアルロン酸」の三通りで登録されており、一つの表記だけでは件数を取り違えます。

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